オスの家政夫、拾いました。0. プロローグ


数時間後。

家にいるからとはいえ、決して仕事から完全に開放されたわけではない。ずっとパソコンとにらめっこをしていると、外から家政婦、いや家政夫さんの声が聞こえた。


「終わったぞー」


部屋からリビングに出た彩響は思わず声を出した。


「うわあ…!」


床も壁も窓も、周りはすべてピカピカ。衣服や書類は隅に片付けられている。数時間前のリビングと同じ場所だとは思えないレベルだ。まるで幻でも見たような気持ちで、彩響は何度も周りを見直した。そんな彩響を見て、ヤンキー家政夫も満足したように笑う。


「ゴミ袋は初回限定特典としてウチで回収するから」


彼が指差すリビングの片隅にはゴミ袋の山が纏めてある。あれだけゴミをためていたのかと考えると、今更ながら恥ずかしくなった。彩響は視線をそらし、わざと大きい声で感謝を伝えた。


「ありがとうございます、よろしくお願いします」

「来週はまた違うやつだけど…ちょっと変わったやつで」


(そういうあなたもそこそこの変わり者だと思いますが…)


「まあ仕事は丁寧なやつだから、大丈夫だと思うぜ。んじゃ、俺はこれで。またな!」


河原塚さんは来た時同様、忙しなく去っていった。

一人残された彩響は改めてリビングを見回した。綺麗な部屋は、引っ越し当初に戻ったようでウキウキする。久しぶりに素顔を見せたソファーに身体を預け、彩響はこのサービスの素晴らしさを噛み締めた。


「気持ちいい…理央、疑ってすまない…」


疑っていた自分が恥ずかしい。こんなにもいい仕事してくれるのに、もっと早く頼めばよかった。彩響はくすくす笑いながらソファーを手でなでた。その時、またバイクの轟音が聞こえた。


「バイク乗るヤンキーの家政夫、ね…」

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