オスの家政夫、拾いました。0. プロローグ
「今瀬清嵐と申します。今日はお片付けに参りました」
やってきたのは背が高く、肌色の白い青年だった。物腰が柔らかく、とても優しい笑顔を見せてくる。今まで来た家政夫達に比べると、一番癖が無さそうに見えるのだが…。案内されるままリビングに入ってきた彼が周りを一回確認した。
「…確か、先日別のスタッフが伺ったはずですよね…」
汚部屋に戻りしつつあるリビングを見て、今瀬さんが困った顔をする。彩響は又最初のように復活した「The汚い部屋」に関する言い訳を必死で考えた。
「えっと…仕事が忙しくて、なかなか…」
気まずくぶつぶつ言うと、今瀬さんはパン!と両手を打ち鳴らした。
「ま、これぞ俺の仕事のやりがいがある場所ですよね。とりあえず片付けしましょうか!俺が指示出すんで、峯野さんは俺に言われた通りものを分けていきましょう!」
「え?私も片付けするのですか?」
「もちろんです、これは『掃除』ではなく『片付け』ですので、ここにあるものを片付けるには主である峯野さんが直接するべきです。それが俺のセオリーです」
「せ、セオリー?」
「さあ、突っ立ってないで動く動く!早速このリビングを片付けましょう!」
「え?ええ…」
今瀬さんのペースに押され、彩響は彼の指示通りびしばしと動き回る。どうして?私はお金を払っているのにー?!なにかクレームを言おうとしても、あまりにもスムーズな彼のペースに巻き込まれ、彩響はしばらく片づけに参加した。