白鳥学園、いきものがかり
「……君達こそ、なんでそんな怒ってるの?」
振り返れない。ピリピリとした空気に翔の傍を離れることが出来ない。
「翔には関係ねぇだろ…俺の紬に勝手に触んなって言ってんだよ」
「そんなに殺気出さないでよ。吃驚しちゃうでしょ~?紬ちゃん落ち着いた?でも気分はまだ悪いよね?一旦病院行こうか。その後お家帰ろっか。それとも真っ直ぐお家が良いかな?」
「…っ、紬、早く俺の元に戻ってきてください。言ったじゃないですか。ちゃんと戻って来るって」
「凪は意外と元気そうだね。沢山差し入れ持ってきたのに意味なかったかなぁ~…。あっ、そうだ。紬ちゃんも食べようよ。新商品のデザートいっぱいあるよ~」
「「翔!!!」」
翔の態度に苛立ったのか、紘と凪が叫ぶ。
私は吃驚して更に翔にしがみついた。
翔は大きく溜息を吐くと持っていた袋を地面に降ろした。そして私の身体を抱きしめる。
「紬ちゃんはあの二人の所に帰りたい?」
紘と凪の……、
私は左右に首を振っていた。無意識に、考えるよりも先に動いてしまった。
「分かった。じゃあ僕お話してくるから。紬ちゃん先に車に乗っててくれる?」
……車?
指を指した先に会ったのはシルバーの車。運転席には翔のマネージャーさんがハンドルを握っていた。
「直ぐ僕も乗るからね。きつかったら寝てても大丈夫だよ。安心して」
「……っ、翔。待って、」
私が翔にしがみついた時、翔が私を抱きしめた時、紘と凪は怒号をぶつけてきた。凄く機嫌が悪いのだと思う。だからそんな二人と翔が話をするなんて…。
「大丈夫。僕以外と強いんだよ」
そう言って、翔は私の額にキスをした。