悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
「何を言っている? そんなことができるわけがないだろう」

「でしたら、平民の方と結婚させてください」

「は? 結婚だと?」

「そうです。あちらのお家に入れば、私はもう王女ではないでしょう?」

もちろん、本気ではない。

彼がイライラしてくれたら少しは勝った気になれる――そんな大人げない気持ちからだった。

前世の記憶のせいで精神年齢が高めとはいえ、ナタリアは反抗期真っ盛りの十三歳。

親への反抗精神も、ちゃんと心の中に存在していた。

普段は将来のために押し殺しているが、リシュタルトがあまりにも思い通りに動いてくれないものだから、リミッターが振り切れてしまったのである。

金の瞳が、視線だけで人を射殺せそうなほど鋭く尖った。

「本気で言っているのか? 俺がそんなことを許すわけがないだろう?」

リシュタルトは吐き捨てるように言うと、苛立ったように部屋を出て行った。

バタン、と荒々しく締まる扉。

ひとり取り残されたナタリアは、虚無感でいっぱいだった。

拳をブルブルと震えるほど握りしめながら立ち尽くすナタリアを、ユキとロイが心配そうに見上げている。

(なんなのあれ!? もう絶対に口きいてやらないんだから!)
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