悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
翌日。

部屋でギルに勉強を見てもらっていたナタリアは、ギルに昨日のリシュタルトとの出来事を話した。

「なるほど、ナタリア様に避けられているから、リシュタルト様のご機嫌がお悪いのですね。朝から使用人たちがビクビクしてますよ。どうにかしてやってくださいませんか?」

「皆には申し訳ないけど、もうお父様と口を聞く気はないわ」

この十二年、ナタリアのことをとことん甘やかしてきたリシュタルトが、まさかナタリアのたっての願いを無下にするとは。

『北大陸で勉強したいならいくらでも金を出してやる』と応援してくれると思っていたのに。

なんだか裏切られたようで悲しい。

「私、お父様に好かれてなかったのね。願いを聞いてくれなかったんだもの」

「何をおしゃってるのですか、逆ですよ。リシュタルト様はナタリア様のことを何よりも大事に思っておられるから、手放したくないのでしょう」

だとしたら、本末転倒である。

自由になるために気に入られる努力をしたのに、気に入られ過ぎて自由を阻害されるなんて。

(ほんと、厄介なことになってしまったわ)

「これからどうしよう……」

ナタリアは、机に頬杖をついて深いため息を吐く。

アリスが城に現れるまで、あと二年。

その間にどうにか解決策を見つけなくてはならない。

もしも見つからなかった場合は、リシュタルトの援助を当てにせず、ひとりで出て行かなければならないだろう。

だがあくまでも、それは最終的な手段にしたい。

(まあいいわ、考えようによっては、まだ二年も猶予があるんだもの。その間に、何かいい方法を考えましょう)

ナタリアはとりあえず気持ちを落ち着けることにした。

――だが、ナタリアの知らないところで、運命はすでに動き始めていたのである。
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