悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
その日の夜。

就寝前、いつものようにリシュタルトがナタリアの部屋を訪れた。

ナタリアは計画通り、ベッドに座って、うるうると瞳に涙を浮かべる。

「ナタリア? 何かあったのか?」

異変に気づいたリシュタルトが、真剣な顔つきで隣に腰掛けてくる。

「いじめられたのか? どこのどいつだ、俺が厳しく制裁してやろう」

三白眼の凄みのある顔で低い声を出されると、自分に向けられているものではないと分かっていても、身震いがした。

「いいえ、違うのです」

ナタリアはふるふるとかぶりを振った。

「昼間に、お兄様からお父様が視察に出られると聞いたのです。お父様と離れるのが寂しくて……」

ホッとしたように、リシュタルトが表情を緩めた。

「なんだ、そんなことか。トプテ村に現れた野生のドラドの様子を見に行くだけだ。すぐに帰ってくるから心配するな」

甘さを孕んだ声で言われる。

ナタリアはリシュタルトに抱き着くと、上目遣いで彼を見上げた。

「私も連れて行ってはくれませんか?」

「ダメだ」

間髪入れずに、リシュタルトから声が返ってきた。

(あれ……?)

予想外の事態に、ナタリアは困惑する。

本宮に移ってからというもの、リシュタルトはナタリアの望みをなんでも叶えてくれた。

だから今回も、あっさり許してくれると思っていたのに……。
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