悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
オルバンス帝国の北部にあるトプテ村は、標高の高い山岳部にある。

ナタリアを連れたリシュタルト一行は、途中で一泊し、翌日の昼過ぎに到着した。

気温が低いからと、道中ナタリアはふかふかの赤い綿入りコートを買ってもらう。

たどり着いたトプテ村は、山間部にあるというのに、思いのほか建築物が立派だった。

なんでも鋼鉄産業が盛んで、田舎の村といえども経済はまずまず潤っているらしい。

「これはこれは、皇帝陛下自らおいでくださるなど、恐縮でございます」

通された宿屋で出迎えてくれたのは、村長らしき男だった。

五十代中頃の、立派な口ひげのあるダンディーな人間の紳士である。

村長の背後には、村の重鎮らしき老人たちが並んでいた。

「おや? こちらのお嬢様は?」

「娘のナタリアだ」

ナタリアは、トコトコと村長の前に進み出る。

「村長様、はじめまして。ナタリア・ベル・ブラックウッドと申します」

幼い王女がもこもこの赤いコート姿でちょこんと礼をする姿は愛らしく、村の重鎮たちは皆「なんとお可愛らしい」と口々に褒めたたえた。

村長も人好きのする笑顔を浮かべている。

「まるで天使のようにかわいらしい王女様ですね。村に春が来たようですな。私はダスティンと申します。はるばるおいでくださり、とても光栄です」
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