悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
ゆっくりとナタリアの頭を撫でる、ぎこちない手つき。

それでもその大きな掌から彼の優しさが伝わってきて、ナタリアは緊張が解けたようにポロポロと涙をこぼした。

周りでは、虚を突かれた顔で、男たちがリシュタルトを見つめている。

「なぜ陛下が急に現れたんだ?」

「まさか、あの狼は陛下だったのか……?」

ダスティンをはじめ、男たちはいっせいに青ざめ震えだす。

漆黒のマントを翻し、リシュタルトが鋭く彼らを睨みつけた。

視線だけで人を射殺しかねない眼差しに、男たちが「ひぃっ」と怯えた声を出す。

「お前たちの罪は重い。ドラドを殺害しただけではなく、俺への攻撃に、王女への暴行。これがどういうことか分かるか?」

「どうか、お許しを……!」

リシュタルトに向け、ガバッと土下座をするダスティン。

「私どもはドラドに村を襲われ、正当防衛から、やむなく銃で撃ったのです。それから陛下に攻撃したのは、あの狼が陛下だとは知らなかったからです。王女様のことにつきましては、暴力をふるったものを厳しく処罰しますので……!」

リシュタルトが不快そうに眉間に皺を寄せる。

「しらじらしい。ドラドをラーの花の紛粉末で錯乱させて捕獲し、売り飛ばして金儲けをするつもりだったのだろう? 自生していないラーの花の香りがしたのが何よりの証拠だ。ドラドの売買は法律で禁止されている」

洗いざらい見抜かれ、ダスティンは愕然としていた。そして哀れなほどガクガクと震え出す。

周囲の村人たちは、諦めの目で気力を失った村長を見ていた。

< 84 / 251 >

この作品をシェア

pagetop