溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
維心さんの気配をすぐそばに感じ、彼の香りや体温を鼻先に感じる。その瞬間、ふわりと、唇にやわらかな熱が触れた。
もうすっかり覚えてしまった甘い感触……彼の唇だ。
これは夢? そうだよね、夢に違いない。だって、維心さんにとっては、キスすら子作りの過程の一部。生理中な上、熱を出して臥せっている私にそうする道理はない。
でも、幸せな夢だ。……残酷なくらい、幸せ。
じわり、閉じている目のふちに涙が滲むのを感じていると、維心さんの唇がゆっくり離れていく。
それでも握られている手の感触は消えず、私はその温もりに縋り、もう一度彼に口づけされる夢が見たいと切に願いながら、深い眠りに落ちていった。
その日は一日中熱が続いたけれど、翌日の月曜は平熱に落ち着いた。
念のため維心さんがネットで調べてくれた評判のよい内科クリニックを受診したけれど、『夏風邪かなぁ』なんてぼんやりした診断しか得られず、同行した維心さんは不満そうだった。