溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「あの医者、ヤブ医者ではないだろうか。原因不明の発熱なら、もっと大きな病院で精密検査をすべきでないのか?」

 帰宅途中の車内でも、維心さんは納得できない様子でブツブツ言っている。

 心配してくれるのはうれしいけれど、ヤブ医者はちょっと言いすぎだ。

「今はもう元気なんですから、わざわざ大ごとにすることないですよ」
「まぁ、それもそうか……。しかし悠里、本当にもうなんともないのか?」
「はい、維心さんが看病してくださったおかげです」

 ニコッと微笑むと、維心さんもやわらかい笑みを返してくれる。

 昨日は〝このまま熱が下がらなければいい〟なんて投げやりにもなったけれど、今の維心さんの笑顔を見たら、治ってよかったなと、素直に思えた。

 そうこうしているうちに車はマンションのエントランスに到着した。車を降りるといつものようにコンシェルジュに車のキーを託し、エレベーターホールへ向かう。

「悠里の体調に問題がないようなら……」

 エレベーターを待つ間、維心さんがふと口を開く。言葉の先を促すように彼を見上げると、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた彼と目が合う。

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