溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「さ、早く車を取りに行かないと暗くなってしまう。歩こうか」
「は、はい」

 もうちょっと、抱き合っていたかったのにな……。

 寂しさから俯き気味に彼の隣を歩きだすと、まるで私の心を見透かしたかのように、維心さんは優しく私の手を取り、指を絡ませて握った。それから、ゴホンと咳払いする。

「俺だって離したくはなかったが……道行く人々の注目を浴びていたからな」

 ボソボソと照れくさそうに語った彼。よく見ると、耳のふちが赤くなっている。

 なにそれ、ずるいです、言葉も、照れ方も。

 きゅう、と胸が縮んで、恋心がまたひと回りもふた回りも成長する。

 なんだか、今日の維心さんになら、私……。

 繋いだ手にギュッと力を籠め、彼の横顔を見上げた。

 視線に気づいた彼が「ん?」と首を傾げる。私は「なんでもないです」と笑って、まっすぐ前を向いた。

 私、今日の維心さんになら、「好きです」って、伝えられる気がする。

 滝を見て、ご飯を食べて帰ってきたら、言おう。自分の気持ち。だって、もう心から溢れてしまいそうなほどなんだもの。

 そのあと夫婦の関係がどうなるのかはわからないけれど……もう、隠しておけないよ。 


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