溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
自分を奮い立たせるように、私は前にまっすぐ続いている道を走りだす。
軽井沢の爽やかな空気を吸い込んで、何にも考えず、前へ前へ。
けれど、途中でビュン、と風を切る音とともに維心さんに追い抜かれてしまった。
少し先で止まった彼は、肩で息をしながらもうれしそうにガッツポーズをする。かと思うとこちらを向いて両手を広げ、スピードを落としながら追いついた私の体を、人目もはばからず抱きしめた。
走ったせいなのか維心さんのせいなのか、鼓動が乱れてうるさい。
「まったく、きみは時々、予想外の言動をする」
「ごめんなさい……」
急に走り出すなんて、謎の行動をしたのだ。呆れられても仕方がない。
「謝れとは言ってない。ただ、放っておけないなと思っただけだ。時々こうして抱きしめて、俺のそばにいろって、言い聞かせたくなる」
「維心さん……」
甘い声音に、優しく胸が鳴る。このまま時間が止まればいいのに。
そう思って、おずおず彼の背中に両手を添えようとすると、彼はパッと体を離した。