溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 彼はなぜか意味深に微笑んで、後ろ手に隠していたものをパッと私の前に見せた。

 赤の四角いパッケージには、派手な黄色の文字で【花火セット】と書いてある。

「帰ってからもお楽しみがあると言っただろ?」
「わぁ、花火……!」

 思わず笑顔になった私を見て、維心さんも笑みを深める。まさか、そんなものまで用意してくれていたなんて……。

 私は告白の件を一旦頭の隅へ追いやり、維心さんとともに外に出た。

 風は静かで、昼間とは違う虫の声が聞こえる。頭上は満天の星空だった。

「花火、小学生以来かもしれません」
「俺もだ。よく玄心とふたりで手持ち花火を振り回して、両親に怒られたよ」

 花火を開封し、地面に固定したろうそくに火をつけながら維心さんが語った。揺らめく炎に照らされた凛々しい横顔に、本日何度目かわからないときめきを覚える。

「維心さんにもそんなわんぱくな頃があったんですね。今の姿からは想像できません」
「今の俺が手持ち花火を振り回してはしゃいでいたら、警察に通報されるだろ」
「そういう意味じゃありませんよ」

 クスクス笑う私に、維心さんが手持ち花火を一本渡してくれる。屈んで火を点けると、先端から勢いよく炎が吹き出し、辺りが一気に明るくなった。

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