溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
維心さんも別の花火に火を点け、私の隣に並ぶ。私のは、次々に炎の色が変わるタイプ。維心さんのは、オレンジ色の火花が散るタイプの花火だった。
「ふふっ。綺麗」
「本当だな。つい見入ってしまう」
言葉数は少なくても、ふたりで花火をしながら時たま視線を合わせて微笑み合う。それだけのことが本当に幸せで、愛おしい時間だった。
何十本もあったはずの花火はあっという間になくなり、残りは線香花火だけになった。
ろうそくのそばにふたりでしゃがんで火を点け、ジジ……と音を立てながら丸くなる線香花火の先端を見つめる。
「俺の方が大きい玉じゃないか?」
「大きいのはすぐ落ちますよ」
「負け惜しみか?」
「そんなことないです。見ててください」
すっかり童心に返っている私たちは、ささやかな勝負に神経を集中させる。
ぱちぱちと音を立てて繊細な火花が散り、花のように大きく成長する。それがやがて細い光となって、花びらのように儚く散り……。
「あっ」
「落ちた。……同時だったな、ほとんど」