溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
いつまであなたは私に無関心なの? 私、あなたの子を妊娠しているかもしれないんですよ?
あなたが欲しがっていた、跡継ぎが手に入るかもしれないんですよ?
涙を浮かべて維心さんに語り掛けながら、いつまでも鳴ることのないスマホを視界に入れないよう、枕の下に押し込む。
明日病院に行って、本当に妊娠していたとする。その事実が、私たちの関係を改善させるのか、逆に終わりに向かわせるのか、どちらなんだろう。
早くなにもかもを明らかにしたい反面、彼と話し合うXデーが怖くてたまらず、私はここ数日睡眠不足にもかかわらず、その日もろくに眠れなかった。
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産婦人科を出ると、金木犀の匂いがした。
甘い香りに誘われて少し歩くと、小さなオレンジ色の花を枝いっぱいにつけた金木犀がいくつも植えられている、広い公園があった。
平日なので公園は空いていて、私はなにげなくベンチに腰を下ろす。するとベビーカーに赤ちゃんを乗せた若いお母さんが、目の前を通りかかった。
「いい天気。気持ちいいねえ」