溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
どんな赤ちゃんだってきっと、愛し合っているパパとママのもとに生まれたいはず。
なのに私たちみたいな……今にも関係が破綻しそうな夫婦が親だなんて。
そこまで思うと、遠くに見えている木の葉の緑が、絵の具に水を垂らしたように、滲んで揺れる。ハンカチで目元を押さえ、洟を啜る。
泣いている場合じゃない。母子手帳を取りに行かなくちゃ。そう思って、顔を上げた時だ。
「早坂……?」
「あ……元木、くん」
目の前には、見慣れないランニングウエアに身を包んだ元木くんがいた。この公園内を走っていたらしい。
「どうしたんだ、こんなところで」
彼は私の泣き顔に気付き、訝しげに眉根を寄せる。
いけない、また心配かけちゃう……。
私は一生懸命顔の筋肉を動かし、笑顔を作ろうとする。けれどそうすればするほど変な風に顔が歪んで、目から涙がぽろぽろこぼれてしまう。
「ごめ、なんでもない……」
ハンカチにギュッと顔を押しつけ、苦し紛れに言う。すると木のベンチが軋む音とともに、元木くんが隣に腰を下ろした気配がした。
「もう聞き飽きたよ、それ」