溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「だからあの時、様子がおかしかったんですね。私に自分と結婚した理由を聞いたり、〝女性は本心を隠すのがうまい〟だなんて言ったり」
「ああ。自分が他人の感情をあまり察知できない自覚があるからこそ、疑心暗鬼になってしまった。詳しく話さなかったのは、弟の名誉のためでもあった。きみの言葉も信じ切れず、本当に申し訳なかった」
悠里はその夜、何度も何度も俺に好きだと告げてくれたのに。俺は勝手に誤解して傷ついて、それでも彼女に癒されたい一心で、ひと晩じゅうその体を貪った。
しかしその後自己嫌悪に苛まれ、思うように悠里に触れられなくなってしまった。
このままでは彼女を愛するというより依存してしまうと、不安になったのだ。
「大丈夫です。維心さんがなにか抱えているのには気づいていましたから」
「悠里……」
優しく微笑む彼女に胸がトクンと鳴って、たまらずその後頭部を手で優しく引きよせ、自分の胸に抱く。柔らかい髪の匂いをかいで、安らぎとときめきで胸を一杯にする。
それから俺は顔を傾け、彼女に口づけをしようと目を閉じる。しかし、今にも唇が触れそうになった瞬間、スーツのポケットでスマホが振動した。