溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
玄心と美久、ふたりの想いに触れた俺は、鉛を飲み込んだように胸が重くなった。もっと早くに気付いてやれれば、こんなに拗れることもなかったのに……自分の鈍感さが心底憎い。
しかし、だからといって俺が愛する相手は変わらない。
美久にも玄心にも申し訳ないことをしたと思うが、俺は俺の想う相手と一生添い遂げる。
その覚悟を今ここで告げ、ふたりを自由にしてやりたい。
『美久……長い間、きみの心を縛りつけていたようで悪かった。でも、俺は今、幸せにしてやりたい相手がほかにいる。その人を心から愛している。だから……きみの気持ちには応えられない』
美久の目にじわりと涙が浮かび、ぽろっと頬にこぼれる。
心は痛むが、これ以上俺が語ることはない。俺は自分の胸に置かれた彼女の手をそっと下ろして、部屋から去った。
「そんな……玄心さんの奥様が、維心さんを、なんて」
「俺もショックだったよ。理想の夫婦だと勝手に思っていたふたりが、そんな脆い関係だったということも。幼馴染としてそばにいて、知らず知らずのうちにふたりを傷つけていた自分も」
自嘲してうなだれていると、膝の上で軽く握った俺の手に、悠里がそっと自分の手を乗せる。