溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
顔を上げると、分娩台にすぐさま歩み寄ってきたのは、院内用の帽子にマスク、ガウンを身につけた維心さん。
グリップを握りすぎてぷるぷると震える手を伸ばすと、彼が力強くギュッと握ってくれる。
「悠里、あと少しだ。あと少しだけ、頑張れ。俺の手が折れるくらいに強く握っていい」
彼の目は、すでに感極まったように潤んでいる。思わずもらい泣きしそうになった瞬間、なにかの異常を知らせるアラームが鳴る。
「赤ちゃんの心音が弱くなってる……」
ぽつりと助産師が呟き、アラームを聞きつけた医師がやってくる。医師は瞬時に状況を把握すると、私の顔を覗いて言った。
「桐ケ谷さん、お母さんも赤ちゃんも消耗しているので吸引します。あと一回だけ、思い切りいきめますか? お母さんの力が必要なんです!」
そうだ……私だけじゃない。赤ちゃんも、頑張っているんだ。疲れているんだ。
「頑張れ、悠里!」
「はい、いきんで!」
助産師と維心さんの声を受け、私は精一杯の力を振り絞る。
ズルン、と温かいものが一気に体の中から出て行く感覚がして、今まで重たかった下半身が嘘のように軽くなった。
放心状態になった私の耳に、生命力の溢れる産声が聞こえてくる。