溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「子宮口は全開。赤ちゃんも下がってるし、いきみたくなったらいきんでください。その時、腰は分娩台から離さないこと。おへそを見るような感覚というのを覚えていてください。そのグリップを思い切り握って」
言われた通り、分娩台の脇にあるグリップを握り、助産師の声掛けに合わせて力を入れる。
赤ちゃんが出そうな感覚は下半身全体にあるものの、一度くらいでは出てくれない。
「はい、息を吸って。……いきんで!」
「ふっ……! あぁ……っ」
何度そのやり取りを繰り返しただろう。段々と体に力が入らなくなり、助産師のタイミング通りにいきむことが難しくなってきた。
入院生活で体力が落ちているせいもあるのだろうが、不甲斐ない自分が情けなくなる。
どうしよう、このまま産めなかったら……。
お産の途中なのに弱気になって、じわりと目に涙がにじむ。そんな時、突然分娩室の扉が開いて、看護師が私に声を掛ける。
「桐ケ谷さん、ご主人が来てくださいましたよ」
「維心さん……」