溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
一瞬引っ越しを忘れて、観光用の展望台に上ったかのようなテンションで景色に夢中になってしまった。
リビングの入り口に立つ維心さんのもとに早足で近づくと、廊下を歩きながら彼が説明する。
「きみの部屋はこっちだ。荷物は運んでおいたから」
「ありがとうございます」
「一応ベッドも用意してあるが、体調のすぐれない時や、どうしてもひとりで眠りたい時だけ使ってくれ。それ以外は毎日、主寝室で俺と一緒に寝てもらう」
「は、はい……っ」
いきなり夜の話をされ、返事をする声が上擦ってしまった。夜、維心さんと同じベッドに入ってあれこれする妄想が勝手に脳内に広がりかけ、ぶんぶんと首を振る。
彼が広い廊下の右手にあるドアを開けると、八帖ほどの洋室だった。バルコニーに繋がる東側の窓は大きく、リビングとはまた違った景色が楽しめる。
セミダブルのベッドやデスクなどのインテリアは落ち着いたブラウンの色味で統一されていて、クローゼットは備え付けのものが二カ所。私にはもったいないくらいの部屋だ。
彼と協力して少ない荷物を整理すること数十分。ようやく片付いたところで彼と部屋の入口に立ち、少しだけ生活感の出はじめた部屋を見渡す。