溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「はい。大丈夫です、今なら」
「ありがとう」
彼は律儀にお礼を言うと、両手でしっかり私の顔を固定し、そっと唇を重ねた。私は無意識に小さく震えていて、それに気づいた彼が「怖いか?」と瞳を覗く。
「い、いえ。たぶん、緊張してるだけです」
「そうか。なら早く慣れてもらおう。キスで緊張していたら、子作りどころじゃない」
至近距離で甘い視線を絡ませながら、維心さんが冗談っぽくそんなことを言う。
彼はなにげなく発しただけだろうけれど、『子作り』というワードに、胸が同時に二種類の痛みを覚えた。
ひとつは、理由は何であれ、好きな相手である維心さんに求めてもらえることを喜ぶ、幸せの甘い痛み。
そしてもうひとつは、私の存在意義はやはり子作りでしかないのだと、失恋の宣告をされたような、切なく苦い痛み。
そのふたつは表裏一体で、彼との結婚生活を送り続ける限り、ずっと付き合わなければならない。うまく、心の中で飼い慣らさないと。
「そう、ですよね。緊張してる場合じゃありませんよね」
複雑な心の内を隠すように微笑むと、維心さんが蕩けるような視線で私を見つめ、そのまま顔を近づけてきた。そして唇が重なる寸前。