溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
ちらりと維心さんの横顔を見上げると、彼はなんのためらいもなく話しだす。
「このたび、私は営業一課の早坂悠里さんと結婚しました。といっても、社内で彼女は旧姓を使い続けますし仕事上の変化はありません。しかし、守るべき家族のために一層の覚悟と責任感を持って業務に臨むつもりです。妻共々、今後もよろしくお願いします」
深々とお辞儀をした維心さんにならい、私も「よろしくお願いします!」と腰を折った。
顔を上げると、営業部の社員たちは一様に面喰った顔をしながらも、拍手をしてくれる。
それが照れくさくて、助けを求めるように一課のメンバーを見ると、満足げに頷く清水課長が、誰より盛大な拍手を送ってくれていた。
「よかった、無事にうまくいったんだな」
朝礼が解散になった後、課長が私のデスクにやってきて、眼鏡の奥の瞳を緩めた。
「無事、といいますと?」
「いや、桐ケ谷部長に相談されていたんだよ。早坂にプロポーズするつもりだって」
意外過ぎる事実に、私は目を丸くした。