溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
再度強く問いかけたけれど、課長は虚を突かれたようにキョトンとしている。維心さんにプロポーズのことは相談されても、それ以上深い話はしなかったのかもしれない。
せっかく課長がランチに連れてきてくれたけれど、結局維心さんの思いはわからずじまいか……。
「いや、早坂。なにを誤解しているか知らないけど、部長は――」
しゅんと俯いた私に、課長がなにか言い聞かせようとしていたその時。
「あ、早坂。と、清水課長。お疲れっす」
「おい元木、立ち止まるな、早く奥へ行け、奥へ」
背後でよく知るふたり組の声がして、課長が「おう」と気さくに手を上げる。
私も後ろを振り返ると、そこにいたのは二課の元木くんと梶原さんだった。
ふたりもこの店にランチに来たようで、案内されたのは偶然私たちの隣のテーブル。まだ課長との話は途中だったけれど、続ける空気ではなくなってしまった。
間もなく運ばれてきた料理を課長と静かに楽しんでいると、隣の席の元木くんがおしぼりで盛大に顔を拭きながらぼやいた。