溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「おい、早く食べないと昼休みが終わるぞ」
ぼうっと食事が中断させている私を、課長が優しく咎める。
「すみません」と慌ててクリームコロッケを口に運ぶ私を、課長は小さな子どもに向けるような温かな眼差しで見つめ、再び口を開いた。
「早坂は難しく考えすぎないで、自分の旦那さんとちゃんと向き合うのがいいと思うぞ」
「……はい。そうします」
そうだよね。維心さんがどう考えているのかは、彼自身に聞かなければわからない。昨日はお父様の怪我の件でバタバタしたけれど、今夜はゆっくり話す時間があるかな……。
その日は一時間ほど残業し、同じく残業中の課長に「お先に失礼します」と挨拶をして営業部を出た。
維心さんは不在だったので、エレベーターホールに着いたところで【先に帰ってますね】とメッセージを打った。
ちょうどその時、誰かが走って来る足音がして、後ろを振り返る。
「あ、元木くん」
「よかった~、間に合って」
汗だくの元木くんは、胸もとのシャツを摘まんでぱたぱたさせながらそう言った。