溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「あのさ、もし早坂さえよければ、これから飲みに行かない?」
「えっ?」
そっけない維心さんを寂しく思っていたら、不意に元木くんに誘われて、私はキョトンとする。
「男とふたりで出かけるなんて、部長に怒られる?」
「いや、それは大丈夫だと思うけど……」
自分で言っていてむなしいけれど、子作りだけが目的の妻が誰と出かけようと、維心さんは無関心だろう。
……でも、今夜は昨夜おあずけになった新婚初夜だ。彼の方にたとえロマンティックな思いが微塵もなくても、私はその時間を大切にしたい。
「ごめんね、今日は都合が悪いの。また今度でもいい?」
顔の前で両手を合わせ、丁重に断る。元木くんは少し残念そうにしながらも、笑って頷いてくれた。
「わかった。じゃ、また」
「うん、お疲れさま」
挨拶を交わした後、彼とは向かう駅が違うため、お互い歩道を反対方向に歩き出す。そうしてひとつ交差点を越えた頃、バッグの中でスマホが短く振動した。
立ち止まってスマホを取り出すと、メッセージの通知が一件。維心さんからだ。
【十メートル先で待ってる】