溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「あのさ、もし早坂さえよければ、これから飲みに行かない?」
「えっ?」

 そっけない維心さんを寂しく思っていたら、不意に元木くんに誘われて、私はキョトンとする。

「男とふたりで出かけるなんて、部長に怒られる?」
「いや、それは大丈夫だと思うけど……」

 自分で言っていてむなしいけれど、子作りだけが目的の妻が誰と出かけようと、維心さんは無関心だろう。

 ……でも、今夜は昨夜おあずけになった新婚初夜だ。彼の方にたとえロマンティックな思いが微塵もなくても、私はその時間を大切にしたい。

「ごめんね、今日は都合が悪いの。また今度でもいい?」

 顔の前で両手を合わせ、丁重に断る。元木くんは少し残念そうにしながらも、笑って頷いてくれた。

「わかった。じゃ、また」
「うん、お疲れさま」

 挨拶を交わした後、彼とは向かう駅が違うため、お互い歩道を反対方向に歩き出す。そうしてひとつ交差点を越えた頃、バッグの中でスマホが短く振動した。

 立ち止まってスマホを取り出すと、メッセージの通知が一件。維心さんからだ。

【十メートル先で待ってる】

< 64 / 240 >

この作品をシェア

pagetop