溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「えっ?」
思わず声を漏らすのと同時に、パッと顔を上げる。するとメッセージの通り、十メートルほど先の路肩に、さっき見たばかりの彼の車がハザードランプを点灯させながら停まっていた。
維心さん、どうして? もしかして、一緒に帰ってくれるのかな。
淡い期待に背中を押されるようにして、私は彼の車に駆け寄った。近づいてすぐ、助手席の窓をノックする。
音に気付いた維心さんは窓を開け、「ロックなら開いているから乗って」と素っ気なく告げる。
感情がまったく読めないけれど、私は「失礼します」と遠慮がちに言って、車に乗り込んだ。
彼の車にはすでに数回乗せてもらっているけれど、相変わらず緊張する。
ドリンクホルダーに置かれたスタイリッシュなディフューザーからはなにやら色っぽい花の香りが漂っているし、スピーカーから流れる穏やかな曲調の洋楽は、普段流行りの邦楽しか聞かない私にとっては、すごく大人の音楽に感じられる。
ただ、緊張する一番の理由は、運転する維心さんが基本無口であるせいなのだけれど……。