溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
私は無表情でハンドルを握る彼の横顔をちらっと見て、こちらから話を振るべきか逡巡する。
課長にはちゃんと維心さんと向き合うべきと言われたし、自分でもその通りだと思っているのに、いざ彼を前にすると言葉が出なくなる。まずは無難に天気の話でもするべきか……。
「悠里、聞きたいことがあるんだが」
「はいっ」
自分の思考にどっぷり浸っていたら、維心さんの方から話しかけてきた。姿勢を正して彼を見つめると、維心さんは進行方向を睨んだままで言う。
「さっきまで元木とずっと一緒だったようだが、なんの話を?」
「あ、はい。ええと……」
素直に話すかどうか、少し迷った。元木くんが私たちの関係を心配していたと話したら、維心さんはどんな反応を示すだろう。
余計なお世話だと迷惑がられたらショックだけれど、もし別の反応が得られるんだとしたら……。
私は一か八かの賭けに挑むような心持ちで、言葉を選びながら話しだす。
「彼、私と維心さんが結婚したこと、すごく驚いていて……それと同時に、結婚生活がうまくいってるのか心配されちゃいました」
「心配? なぜだ」
「彼が言うには、維心さんが私の前でその……デレデレ?している姿を見たことがないから、私が不安になっているんじゃないかと思ったみたいで」