溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
あくまで、〝私自身は全然大丈夫ですけど〟という軽いスタンスを崩さず、笑顔で話す。
そうすれば、維心さんの口からネガティブな発言が飛び出しても、笑顔を貼り付けたままで乗り切れる気がしたからだ。
「心外だな」
しかし、いざ維心さんが不本意そうにそう呟くと、私の顔から笑みが消えた。維心さんの目は険しく細められ、車内に穏やかではない空気が漂い始める。
これは私、完全に賭けに負けたかも……。
続いて投げかけられるであろうショックな言葉に耐えるべく、維心さんからパッと目を逸らしたその時。
「顔に出さないだけで、俺は四六時中悠里のことを考えているというのに」
え? 聞き間違い……?
勝手に期待してドキドキと鳴る胸を宥めつつ、再び維心さんに視線を戻す。すると彼も一瞬だけこちらを見やり、ふわりと甘い微笑みを浮かべて言った。
「ようやく今夜からきみを抱け……いや、子作りに励めるんだ。今日はそのことで一日頭がいっぱいだったよ」
「そ……そう、ですか」
期待に膨らんでいた胸が急激にしぼんでいくのを感じ、私は力ない笑みを浮かべてうつむいた。
『抱く』をわざわざ『子作り』と言い直したことに、なにかしらの意図があるのは明白だ。
妙な勘違いをするなと、私に釘を刺したつもりだとしたら、ひどい人。でも、勘違いさせたくないならそもそも抱かないでと、ハッキリ言えない自分も大概だ。
私たちって、すごく歪な夫婦……。
私は運転席の彼から顔を背けるように窓の方を向き、やるせなさを堪えるようにキュッと唇を噛んだ。