恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「売れるかしら?」

「もちろんです! 売りましょう!」

 なんだかうれしくなって私が笑顔で受け答えすれば、お母様も自然と柔らかい表情になっていた。

「オーガニックのコンフィチュールも取り扱いたいのよ」

「グラノーラとかもいいですよね」

 唯人さんと社長をそっちのけにして、お母様とふたりで話が盛り上がる。
 まさかこんな展開になるとは予想だにしなかった。

「莉佐さんもロカボ商品とか好きよね。だったら私の会社を手伝ってちょうだい。いろいろアイデアが欲しいわ」

 お母様のこの発言に、唯人さんがすかさず「母さん!」と横槍を入れた。

「莉佐さんは妊婦なのよ? このままここで秘書としてバリバリ働かせる気? それなら私のそばにいるほうが安心でしょ」

「いや、でも……」

「心配しなくてもイビったりしないし、ベビー用品も仕事の合間に私が選ぶから大丈夫」

 すでに決定事項かのように、お母様が淡々と唯人さんに言い放つと、唯人さんはあきれたとばかりに小さく息を吐いた。

「ベビー用品は俺たちで決めるよ」

 唯人さんはそう返事をしたけれど、私は出産に関してはお母様にぜひ相談に乗ってもらいたい。きっと力になってくださるはずだ。
 そんな考えを唯人さんに伝えたら、きっと驚くことだろう。

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