恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
ランチを終えて秋本さんと一緒に会社に戻ってくると、一階のロビーで見知った男性の姿が目に入った。
「おう、海老原! 久しぶりだな」
「永井さん。お疲れ様です」
私たちの様子を見て、秋本さんが「先に行くね」と気を利かせてくれた。
永井さんは私が前にいたネイル商材の会社である㈱アナナスの先輩社員だ。
私は総務部だったけれど、ここと比べると小さい規模の会社だったので、同じフロアだった営業部の人たちともそれなりに交流があった。
「元気でやってるか?」
「はい。ありがとうございます」
今日はこっちでなにか仕事があったのだろうけれど、まさか偶然会うとは思わなかった。
永井さんのとびきり明るい性格は営業向きなのだが、なんせ声が必要以上に大きい。実はそれには前から気づいていた。
「お前、いきなり転勤だったもんな。みんな驚いてたぞ? ていうか今度うちの会社で飲み会やるからお前も来いよ」
「そうですね、時間が合えば。それより永井さん、“お前”って言葉は、よそでは禁物ですよ」
「あ、ダメだっけ」
親しい間柄なら別だが、今のご時世では“お前”と呼ばれることを嫌う女性も少なくない。
永井さんにそのつもりはなくても高圧的だと取られかねないので、出来れば避けたほうがいい言葉だ。
私はアナナスに入社したときから永井さんの人柄や性格を知っているし、“お前”呼びをされても平気なのだけれど。お節介な忠告だっただろうか。
「じゃ、俺行くわ。またな!」
腕時計で時間を確認しつつ、アポに間に合わないのか、永井さんはあわてて駆け出していった。台風みたいな人だなと、私はその背中を見送る。
転勤してまだ四ヶ月なのに、それがなんだか懐かしく感じた。
「おう、海老原! 久しぶりだな」
「永井さん。お疲れ様です」
私たちの様子を見て、秋本さんが「先に行くね」と気を利かせてくれた。
永井さんは私が前にいたネイル商材の会社である㈱アナナスの先輩社員だ。
私は総務部だったけれど、ここと比べると小さい規模の会社だったので、同じフロアだった営業部の人たちともそれなりに交流があった。
「元気でやってるか?」
「はい。ありがとうございます」
今日はこっちでなにか仕事があったのだろうけれど、まさか偶然会うとは思わなかった。
永井さんのとびきり明るい性格は営業向きなのだが、なんせ声が必要以上に大きい。実はそれには前から気づいていた。
「お前、いきなり転勤だったもんな。みんな驚いてたぞ? ていうか今度うちの会社で飲み会やるからお前も来いよ」
「そうですね、時間が合えば。それより永井さん、“お前”って言葉は、よそでは禁物ですよ」
「あ、ダメだっけ」
親しい間柄なら別だが、今のご時世では“お前”と呼ばれることを嫌う女性も少なくない。
永井さんにそのつもりはなくても高圧的だと取られかねないので、出来れば避けたほうがいい言葉だ。
私はアナナスに入社したときから永井さんの人柄や性格を知っているし、“お前”呼びをされても平気なのだけれど。お節介な忠告だっただろうか。
「じゃ、俺行くわ。またな!」
腕時計で時間を確認しつつ、アポに間に合わないのか、永井さんはあわてて駆け出していった。台風みたいな人だなと、私はその背中を見送る。
転勤してまだ四ヶ月なのに、それがなんだか懐かしく感じた。