おじさんには恋なんて出来ない
第四話 おじさん頑張る
 テレビを見ながら、辰美はビールの蓋を開けた。画面に映るアイドルと、観覧席にいるファンを眺めながら「俺もこう見えてるのか」と思った。

 MIYAはアイドルではないが、MIYAの行く先々について行ったりライブを見に行く姿はテレビに映っているファン達となんら変わらない。あそこまでミーハーではないが、第三者から見れば同じだ。

 年齢を考えてある程度は節度を持って接していると思うが、やはりこんなおじさんがあんな若い娘のファンを名乗るのは気持ちが悪いかもしれない。

 だが、MIYAのファンはほとんどが男性で、しかもそこそこ歳をとった人間が多かった。だから自分が目立つことはない────はずだ。

 ────お節介を言いすぎたかな。

 先日バッタリ上野駅で会ったが、MIYAがなんだか元気がなさそうに見えて、つい言ってしまった。年寄りの要らぬお節介だ。うっとおしいと思われていたらどうしようか。今更気になった。

 MIYAの曲が気に入った。最初はそれが入り口だった。だが最近は別の思いが芽生え始めたような気がする。

 自分は会いに行って曲を聞くことがしかできないのに、もっとMIYAに何かしてやれたらと思う。

 MIYAが大きなホールで弾きたいのならそうしてやりたいし、グランドピアノで弾く姿だって見てみたい。完全にファンの心理だ。
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