導かれて、放れられない
天聖さんが傷つけられる……
いや、殺されるかも?
そう思った、桔梗。

「わかりました。
でも、他のやり方にして下さい。
天聖さんの代わりに私を殴って下さい」
「はぁぁ?ダメだよ!ヤらしてよ!
天聖の女だからな。
身体とかスゲーかもよ!」
「ね?
来いよ!」
桔梗は身体が震えていた。
そして、必死に自分自身に言い聞かせていた。

覚悟はできている。
自分は天聖さんの恋人なんだ。
こんなこと位、なんてことない。
と━━━━━━━

「はい、こっちだよ~」
人気のないところに連れて行かれ、男に引っ張られて車に押し込められようとしていた。
「やっぱり、怖い…天聖さん、助けて……」

その時桔梗は、物凄い力で引き寄せられ抱き締められた。
すぐに誰かわかった。
この抱き締める力の強さと、匂い。
一人しかいない━━━━━━

桔梗も必死にしがみついた。
「桔梗、遅くなってごめんね…もう大丈夫だよ?」
「うー天聖さん!」
あっという間に、涙が込みあがってきて溢れていた。

「で?俺の恋人をどこに連れていこうとしてたの?」
桔梗を抱き締めたまま、鋭い目つきと口調で言った天聖。
桔梗は顔が見えなくても、天聖の恐ろしさがわかる気がした。
「あ?
落とし前だよ!?お前の代わりに恋人に落とし前つけてもらうんだよ!」
「は?何の?」
「まぁ…本人がいるなら、お前に落とし前つけてもらうがな……」

カチャ━━━━━━

「え……?」
フッと見上げた、桔梗。
天聖が額に拳銃を突きつけられていた。

桔梗は現実には見ない、テレビなどでしか見ないソレに身体の奥底から怯えていた。

警察呼ばないと………
でも、声が出ない。
息の仕方もわからない。
普段感じることのない恐怖に包まれていた。
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