とろけるような、キスをして。
それを見ながら、両腕を控えめに前に出して身体を伸ばす。
……日が落ちるのが、早いなあ。
冬至を過ぎて日が延びるのが、今から楽しみだ。
「お疲れ様でした。定時過ぎちゃったし、帰りましょうか」
「すみません。千代田さん残業NGなのに」
「いいのいいの。今のうちに少し進めておかないと来週から地獄みたいになっちゃうから」
にこやかに千代田さんは笑うけれど、やはりお子さんが心配なのだろう、腕時計をちらちら確認して急いで帰って行った。
私も帰ろう。
そう思って戸締りをして、職員室に鍵を返しに行く。
「失礼しまーす……」
時刻は十九時。まだ部活動はやっている時間だ。
電気は付いているものの職員室には誰もおらず、私はキーボックスに鍵を入れて部屋を出る。
廊下では、吹奏楽部の力強い楽器の音が響いていた。
きっと晴美姉ちゃんも頑張っていることだろう。
玄関に向けて歩いていると、「あ、野々村さん!」と声をかけられて後ろを振り向く。
「田宮教頭」
後ろから小走りで私を追いかけてきたのは教頭先生だった。
「ダメですよ。走らないでって言われてたじゃないですか」
教頭先生は先日ぎっくり腰になってしまい、三日ほど仕事を休んでいた。しかし土日を挟んでも予後がどうもよくないらしく、あまり動いたり負担をかけないようにとお医者さんに言われたらしい。