とろけるような、キスをして。
「晴美姉ちゃんの結婚式が無かったら、多分私、いまだに帰って来られてなかった」
写真立てを握る手に、力が入る。
先生は、そんな私を黙って自分に引き寄せた。
ポフ、と頭が先生の肩口に当たる。
「世間一般では、みゃーこのことを薄情だとか、親不孝ものとか。そう言うかもしれないな」
「……」
「……でも、俺はあの時のみゃーこをずっと見てたから、みゃーこを責めるつもりはないよ」
「……先生」
「みゃーこがあの時、どれだけ苦しんでどれだけ悩んで東京に行ったか。一人で全部抱え込んで壊れそうになってたみゃーこが、どんな思いで今日帰って来たか。それを考えたら、誰も何も言わねぇよ。みゃーこのことをそんな風に言う奴はこの街にはいない。
……きっと、みゃーこの両親も同じだと思う」
先生の優しい声が、スッと頭に入ってくる。
先生の声は、昔から魔法みたいだ。
私を優しく、包み込んでくれるみたいに柔らかい。
先生にそう言われたら、そんな気がしてくるんだから不思議だ。
「せんせー……、ありがと」
返事の代わりに私の頭を撫でてくれる先生は、それからしばらく私の気が済むまで寄り添ってくれた。