とろけるような、キスをして。



「あれ?美也子だ」


「あ、晴美姉ちゃん」



 ある日、晴美姉ちゃんもどうやら他の先生たちに雑用を押し付けられたらしく、深山先生と二人で図書室に来たことがあった。



「え?知り合い?」


「あぁ、私たち従姉妹なの」



 驚く先生に晴美姉ちゃんが答えると、先生は目を見開いた。



「え!四ノ宮先生とみゃーこが従姉妹!?えっ、似てなっ!」


「失礼なっ!」


「しかも従姉妹っていう割には歳離れてんのな?」


「私の母親と美也子の母親が歳の離れた姉妹なの」


「なるほど」



 納得したのか、先生は何度か頷いていた。



「……ていうか、"みゃーこ"って何?」



 晴美姉ちゃんはむしろそっちの方が気になっていたようで、先生に呆れた視線を送っていた。



「俺が考えた美也子ちゃんのあだ名。なんか名前も顔も猫みたいで可愛いから、"みゃーこ"」


「安直ー。まぁでも確かに、似合ってるかも」



 晴美姉ちゃんにもからかわれたけど、それがきっかけでその日からもっと打ち解けたような気がする。


 そして穏やかな時間は、先生の図書室の整理が終わってからも続いた。


 先生は職員会議があったり忙しそうで、毎日来るわけではなかったけれど。


私は何をするでもなく、一人で窓を開けて部活動に励む生徒たちを眺める時間が好きだった。


たまに先生と喋って。晴美姉ちゃんもたまに来て。馬鹿みたいな話で盛り上がって。一緒に本を読んだりして。


 そうして、いつしかそんな時間が私の宝物のようになっていった。




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