茨ちゃんは勘違い
唸れ!必殺…
西校舎二階。

そのフロアは二年のクラスが密集していた。

その内の1クラス、二年D組に木更津甲斐(きさらずかい)という桐海暁屈指の美男子が居た。

この男、知る人ぞ知る中学から数えて間も無く『女子生徒百人斬り』を達成しようとしている強者だ。

中高生向け某ファッション雑誌の表紙を飾るモデルに劣らないルックスを誇り、スポーツ万能成績優秀といった高スペックの持ち主。

この日、彼は生まれて初めて恋文というものを異性に出した。

「ボクは、いつも出される側だからね。たまには出してみるのも良い余興だろ?あーはーん?」

語尾が非常に余計で、イラっと来るが、黙っていればカッコいい分類に入る甲斐は、その恋文を出した相手の返事を教室で優雅に待っていた。

話は変わるが、人は何処で道を誤るのか。

転機というか、運命というか、ひょんな事から自分の価値観が変わってしまう事があるのは、何故なんだろうか。

甲斐にとって今日という日は、その類いの出来事が起きてしまうのである。

時刻はHR開始、五分前である。
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