茨ちゃんは勘違い

泳げベソカキくん

「へ～畑山先輩って、下の名前"凛(りん)"っていうんですか～」
「うん。うちの親が、凛とした子に育つようにって付けた名前。」
「良い名前ですね。私、"桜"なんて名前負けしてる気がしちゃって…」
「そんな事無いよ！住吉さん十分可愛いもん。」
「…。」

他の生徒は既に殆んど帰ってしまった夕刻。

粗方雑用と掃除を終えた、百合絵・茨・畑山の三人に、桜が加わり他愛も無い話に花を咲かせている。

まだ日没が早い季節のプールサイドは、僅かな蛍光ランプの光が相手の顔を確認する術だ。

こういう大した意味も無い井戸端会議を百合絵は苦手としていた。

こういう行為を繰り返す度に、オバサンに近付いてしまう気がしたからだ。

元々近寄りがたい容姿・オーラを纏っていたし、この腹黒な性格だ。

それ故、何かと敬遠しがちの百合絵には、中学時代友達は少なくは無かったが多い訳では無かった。

久々の無駄話に付き合うと、疲れる……百合絵は、ほぅっと溜め息を吐いた。