茨ちゃんは勘違い
浮かない顔をしている百合絵に気付いた桜が、透かさず問い掛けた。

「あれ?どうしたの白石さん。溜め息なんか吐いちゃって。」
「あ、いや別に。」

いちいち目敏いというか、鬱陶しい奴だな…。

百合絵は口にこそしなかったが、すっかりご機嫌斜めだ。

桜の要らぬ突っ込みに、茨と畑山の二人がノってくる。

「百合絵ちゃん…やっぱ茨と同じで黒T(黒酉先生の意)のシゴキに心底嫌気が差しているんだね……分かる!分かるよその気持ち!!」

それも無くは無いけど、お前に同調されたくねーよ。

「疲れちゃった?何だかんだでこんな時間だしね。そろそろ帰ろうか?」

畑山が腕時計を見ながら、提案する。

おおっ!ナイス先輩!流石先輩は分かってらっしゃるっ!

顔には出さなかったが、心の中では嬉々とする百合絵は、「そうですね…」とだけ答えた。

それを聞いた茨が忽ちに膨れっ面になる。

「え~~!!茨喋り足りな~い!!」

貴様は黙ってろ、糞虫。

百合絵が耐えるように奥歯を強く噛む。

怒りを悟られないようにしている百合絵が大人なのか、茨の我儘が子供なのかは最早判断仕様がない。
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