茨ちゃんは勘違い

丸、三角、死角

話は数分前に遡る。

女子四人がプールサイドで井戸端会議を行っていた時の事である。

プールを囲うフェンスの一部、どういうキッカケでそうなったのかは知らないが、網状部分が裂けていて、そこからニョッキリ顔を出し、異性の語らいを盗み見する者がいた。

二年D組、木更津甲斐その人であった。

木更津は神妙な面持ちで、四人の様子を眺めながら、自問自答していた。

遠巻きながらも他三人を眺めているのはまだ分かる。

校内屈指の美少女達だ。

だが一人、それはシンボルマークで言うと♀を素直に付加してよいかどうかを迷ってしまう程のナマモノと書いて生物と読む女。

城山茨。

自分は何故に他の三人に目もくれず、彼女に釘付けなのか、自身理解不能に陥っていた。

未だかつてない衝動。

あの時、彼女に一方的なフラレ方をした以来、気付けば目で追うそんな毎日。

彼女を見ているだけで、激しく鼓動する心臓。

この動悸は何なのだ?

雄としての本能。

即ち……。

「命の危険が危ないからなのか……」

バカ○ンのパパみたいな台詞を吐いてみる木更津。

木更津は自身の気持ちを確かめる為に、半ばストーカー的な行為をしていた。
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