君にとってのハッピーエンド、僕にとってのバッドエンド
「優二くん!」

パアッと花が咲いたみたいな笑顔を向けられ、僕は若菜を抱き締めようと手を伸ばす。しかし、若菜は誰かに腰に腕を回され、腕を回した人物に攫われてしまった。

「は?」

メガネをかけ、無地のTシャツにシャツジャケットを羽織り、スキニーパンツを履いたその男性は僕をめちゃくちゃ警戒した目で睨んでくる。メガネのせいでよく顔はわからないけど、華やかな顔立ちであることは確かだ。

「えっと……この人は……?」

ドクン、と嫌な予感がする。若菜に兄弟はいないし、親戚付き合いがあまりないことも知っている。ただの友達ならば、幼なじみとのランチにこんな形で登場しないだろう。

「優二くん、この人はーーー」

「俺の大事な恋人とどういう関係?」

若菜が言い終わる前に、男性がメガネを外して言う。華やかな顔立ちがあらわになり、僕は息を飲んだ。

そこにいたのは、大人気俳優の紫水圭(しすいけい)だったから。
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