託宣が下りました。
(……?)
ふと、何かが心に引っかかりました。何かを思い出すような……
「……からね、姉さん」
ラケシスが何かを言っています。それに気づいて、わたくしははっと妹を見ました。
「姉さん?」
「ご、ごめんなさい。今何て言ったの?」
「ぼーっとしてたの? やっぱり疲れてる?」
ラケシスは心配そうな顔になりながら、「“姉さんのことはちゃんと守るから”って言ったの。討伐には出るけど、できる限り時間を節約して傍にいるから」
「そ――そんなに気を遣わなくていいのよ?」
「だってヴァイス様がきたら大変だろ。父さんは忙しいし、母さんでは相手ができないよ」
たしかにそうなのですが……
わたくしは首を振りました。
「大丈夫。騎士が来るならわたくしが自分で追い払います」
「……本当に?」
そのときのラケシスの目が本当に不審そうで、わたくしは心外に思いました。
「本当よ? どうしてそんなに疑うの」
「……姉さんさあ、ひょっとしてヴァイス様に情が移ってきてる?」
「……」
妹のじとっとした目。さすがに、一緒に育った妹の目はごまかせません。
わたくしは目を伏せます。情が、移る――
「……少し違うわ。わたくしはあの人に“憧れて”いるの」
「憧れ?」
ラケシスが驚きの声を上げました。他人の口から聞くとますますふしぎな言葉で、わたくしは小さく苦笑しました。
騎士への気持ちが変わってきてしまった――。
そのことに気づいたわたくしは、その正体を見極めようと必死で考えました。そのまま放置しておくには、あまりに大きな感情でしたから。
迷惑なのは変わりなく、けれど以前ほどの嫌悪感はない。彼をにらみつけたい気持ちに変わりなく、けれどにらむ理由が変わってきている。
答えを出すのにはとても苦労しました。そして、最終的には一番認めたくなかったことを認めるしかなくなりました。
つまり自分は、彼に好意を持ち始めたらしい――ということ。
そして、迷惑だと思いながら好意を持つ矛盾が自分で理解できず困惑しました。自分はいったい彼に何を求めているのか――
いったい、彼のどこに好意を持ったのか。
ふと、何かが心に引っかかりました。何かを思い出すような……
「……からね、姉さん」
ラケシスが何かを言っています。それに気づいて、わたくしははっと妹を見ました。
「姉さん?」
「ご、ごめんなさい。今何て言ったの?」
「ぼーっとしてたの? やっぱり疲れてる?」
ラケシスは心配そうな顔になりながら、「“姉さんのことはちゃんと守るから”って言ったの。討伐には出るけど、できる限り時間を節約して傍にいるから」
「そ――そんなに気を遣わなくていいのよ?」
「だってヴァイス様がきたら大変だろ。父さんは忙しいし、母さんでは相手ができないよ」
たしかにそうなのですが……
わたくしは首を振りました。
「大丈夫。騎士が来るならわたくしが自分で追い払います」
「……本当に?」
そのときのラケシスの目が本当に不審そうで、わたくしは心外に思いました。
「本当よ? どうしてそんなに疑うの」
「……姉さんさあ、ひょっとしてヴァイス様に情が移ってきてる?」
「……」
妹のじとっとした目。さすがに、一緒に育った妹の目はごまかせません。
わたくしは目を伏せます。情が、移る――
「……少し違うわ。わたくしはあの人に“憧れて”いるの」
「憧れ?」
ラケシスが驚きの声を上げました。他人の口から聞くとますますふしぎな言葉で、わたくしは小さく苦笑しました。
騎士への気持ちが変わってきてしまった――。
そのことに気づいたわたくしは、その正体を見極めようと必死で考えました。そのまま放置しておくには、あまりに大きな感情でしたから。
迷惑なのは変わりなく、けれど以前ほどの嫌悪感はない。彼をにらみつけたい気持ちに変わりなく、けれどにらむ理由が変わってきている。
答えを出すのにはとても苦労しました。そして、最終的には一番認めたくなかったことを認めるしかなくなりました。
つまり自分は、彼に好意を持ち始めたらしい――ということ。
そして、迷惑だと思いながら好意を持つ矛盾が自分で理解できず困惑しました。自分はいったい彼に何を求めているのか――
いったい、彼のどこに好意を持ったのか。