託宣が下りました。

 わたくしは母とラケシスたちと別れて、父に会いにゆくことにしました。

 使用人が案内してくれたのは父の書斎でした。父がこよなく愛している部屋です。わたくしが勉学に抵抗がないのは、おそらく父に似たのでしょう。そう思うととても嬉しいのです。

「アルテナ」

 部屋を開けるなり、父の優しい声がしました。ああ、母のときと違って安心感のある穏やかな声。

「お父様」

 わたくしは父に駆け寄り、子どものように抱きつきました。父は抱き留めてくれました。大きな手でぽんぽんとあやすように背中を叩いてくれます。

「よく帰ってきた。大変だったな」
「ありがとうお父様」
「……ソフィアにも会ったな?」
「はいお父様。いつも通りでした」

 わたくしが正直に言うと、父は苦笑しました。「まったく困ったものだ」わたくしの体を放し、椅子に座るよう促します。

 わたくしは言われた通りに座りました。お父様は書斎机に座ると、机に肘をついてわたくしを見つめました。

「……お前が星の巫女に選ばれたと聞いたときは、さすがに喜んだものだが……。今ではその託宣を恨むことになろうとはな」
「……ごめんなさい」
「お前のせいではないさ。託宣は本物なのだろう」

 本物なら本物で困るのだがな。そう言って、お父様は苦く笑います。

「ヴァイス殿か。彼はどうしている?」
「……さあ。王都にいるのではないでしょうか?」

 わたくしはとっさに嘘をつきました。

 騎士は今この町に向かっているはずです。この町を悩ます魔物を討伐するために――。

 それを正直に言えなかったのは、父がどう反応するのか恐かったからでしょうか? 自分のことながら分かりません。

「彼も少しは悲しんでくれるのかね。お前がこちらに帰ってしまって」
「………」

 父は椅子に深くもたれ、ふうとため息をつきます。

「お前やラケシスの話を聞く限りは、遊んでいるようにしか思えなかったのだが」

 ぐうの音も出ません。実際当事者であるわたくしにも、騎士が遊んでいるようにしか見えなかった時期がありました。

 それが少しは違ってきたのは、いつからだった……?

(……いいえ、騎士は最初からずっと変わらない)

 変わったのはわたくしのほう。彼と向き合う、角度を強引に変えられてしまって。
 今では彼の気持ちを信じ始めている自分がいる――。
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