託宣が下りました。
三日後――。
わたくしの怪我の痛みもだいぶ和らぎ、勉学の邪魔にはならない程度になったころ、魔物学の先生は家の門を叩きました。
「あの~……初めまして」
「は、はい。初めまして」
立ち上がったわたくしが緊張して頭を下げると、目の前の男性は”にへら”っと笑いました。
「いや~カイの言う通りきれいなお嬢様ですね……。僕うれしいですー」
「……はあ」
きれい? わたくしが?
そんな言葉はあの軽々しい騎士の口からも聞いたことがありません。あまりに聞いたことがない言葉すぎて反応さえできないではないですか。
おまけに、何ですか、カイ様がそう言ったのですか?
……カイ様あの前髪のせいでよく見えてないのかもしれませんね。
「いいお宅ですねぇ~。僕こんな家にお邪魔したことないです~。……あ、他人様の家自体入れてもらえたことないですあはは」
「……???」
わたくしはおそるおそる尋ねました。
「あの……ヨーハン・グリッツェン様……ですよね?」
「そうですよ~。ヨーハンと呼んでください~」
「……」
……この方が、カイ様が太鼓判を押す学者さん?
信じられなくて、わたくしはまじまじと彼を見つめました。二十五歳だと言う彼は一応年齢相応の外見ですが、髪の毛が寝癖でぴんぴん跳ねています。目はねぼけまなこと言いますか……どうにもぼんやりして見える目です。言動といい、とてもふわふわしていて心配なのですが。
(で、でも、カイ様のご紹介だもの)
あの心配性で慎重なカイ様がお薦めしてくださったのです。相当信頼できる方に違いありません。第一印象で人を決めては駄目――わたくしは気持ちを入れ替え、改めて頭を下げました。
「ヨーハン様、お忙しいところありがとうございます。どうかわたくしに魔物についてご教授ください」
するとヨーハン様は眠たそうな目をしばたいてわたくしを見ました。
「真面目ですね~。嬉しいです……魔物について学びたいっていう女性、あんまりいないんですよねぇ~」
寝癖だらけの髪を片手でかき回し、にこりと笑います。そんな顔をすると本当に嬉しそうで、わたくしはほっとしました。