託宣が下りました。
実は――と彼は声をひそめました。
「大きな声では言えませんけれども~。サンミリオンで魔物取引が行われているらしいんです~」
「ま……っ!?」
「しーっ、静かに」
わたくしは慌てて両手で口を抑えました。
魔物取引。ヨーハン様の講義で聴いたことがあります。
それは人間が魔物を捕らえ売買すること。
比較的弱い魔物であれば、人間がしつけることができるというのです。
もちろん、許されることではありません。何せ魔物で行うことと言えば、観賞用以外には他人を害することばかりなのですから。
ヨーハン様は眉尻を下げて「信じたくないんですけどねえ」と言いました。
「ここの町長様はご立派ですよ~。取り締まりもきっちりしていらっしゃる。今後魔物について学校で教えるようにっていう意見も容れてくれましたし~。本当にこの町で取引が行われているなら、僕許せません」
そう言えば父は魔物学を学校の教科として取り入れる準備をしていたはず……。
ヨーハン様はそれをたいそう恩義に感じてくださっているようです。
「そんなわけで講義をお休みするの許してください」
ぺこり、と彼は頭を下げました。
わたくしは両手を振って「顔を上げてください」と言いました。
「こちらこそ、町長の娘としてお礼を言いたいです。本当に……町のためにすみません」
「いえいえ、僕この町に居候させてもらってますし。稼ぎないのに」
「わたくしに教えてくださっているじゃないですか。ちゃんと稼いでますよ?」
「いえいえそれも全部カイやアルテナ様のおかげで~って、きりがないですねえ」
わたくしたちは揃って笑いました。
とても心地よい笑いでした。こんな笑いかたができたのはいつぶりでしょうか……。
「あ、そうだった。忘れるところだった」
これをどうぞ、とヨーハン様は重そうに担いでいた袋を下ろしました。
「全部本です。お薦めばかりなので、ぜひ。外に出られないんでしょう?」
「わあ……!」
頼むまでもありませんでした。ヨーハン様はわたくしに必要なものをよく分かっていたのです。
よっこらせ、とドアの内側に袋を置いて、彼は笑顔で言いました。
「あなたは本当にいい生徒です。きっと次の講義までにまた成長していらっしゃるでしょうね」
「そんな、とんでもない!」
「間違いないですよ。さて」