託宣が下りました。
ヨーハン様はなぜか沈黙しました。そして、
「――アルテナ様」
ふいに、彼はわたくしの手を取りました。
わたくしはぴくりと震えて――けれどそのまま、彼に手を握られるままにしました。
「アルテナ様。僕ら、たぶん似ていますね。だからこんなに居心地がいい」
(似ている――)
気がつけば夜空の瞳がわたくしを優しく見つめています。
握られた手が温かい。包むような手です。それでいて――力がこもっていない。
安心できる手。
わたくしはヨーハン様を見つめました。
ヨーハン様は、目を伏せました。
「……ちょっと卑怯ですよねえ、これは」
「え?」
「はは、いえ。何でもありませんよ~。そんなわけで、調査が終われば講義は再開したいので~。どうぞよろしくお願いします~」
そのままもう一度頭を下げ、彼は帰ろうと半身を傾け――。
最後に、こう言いました。
「アルテナ様、忘れないでくださいね~。洞窟の魔物、本当に手強そうなんです。ヴァイス様たち、命をかけて戦ってくれてるんですよー」
「―――」
わたくしは言葉を失いました。
胸を、痛打された心地でした。
ああ――また大切なことが頭から抜け落ちていたのです……自分は。
(……騎士は、アレス様たちは、無事?)
ラケシスは、カイ様は……次々と彼らの顔が浮かんできます。夜空の星のように脳裏に焼き付いて、離れなくなります。
ヨーハン様が帰っていき、わたくしはドアを閉めました。
しんと静まりかえる部屋の中央で、ぎゅっと目を閉じ――。
『魔物は一直線な人間を嫌います』
不思議なことですが今この瞬間も、鮮明に思い描くことができるのです。騎士が約束を果たし、意気揚々とわたくしの元へ現れる姿を。
その身を案じる一方で、無事を信じてもいる。何ともおかしな感じです。ひょっとしたら悪く考えたくないだけなのでしょうか。それともわたくしは意外と楽観的だったのでしょうか?
いえ――違います。
わたくしは無根拠に信じているだけ。
『信じろ』と言った彼を、真正直に信じただけ。
騎士よ、だから。