託宣が下りました。

 父は来てほしいとは思っていない――。

 そう、そうなのでしょう。わたくしも父とはどんな人かをよく知っています。きっと父はそれを望まない。

 でも、それでも――。

「………」

 うつむくわたくしの隣に、ソラさんがちょこんと座り込む気配がしました。

 何も言わず、そのまましばらく。
 彼女のほうに顔を向けることさえできないわたくしのそばで、じっとしていた彼女は、

「巫女」
 ふいに、ぱっと立ち上がりました。「私は行くから」

「……? ソラさん?」

 わたくしは顔から手を放しました。
 ソラさんは部屋から出ていこうとしているところでした。

「ま、待って! どこへ行くの……!」
「外。町長のところ」
「駄目ですよ! 話を聞いていたでしょう、今外に出ては……!」
「平気。私は魔術師だもの」

 ドアを開けながら、ソラさんは強い声で言いました。「魔術師は魔物の位置が分かるから」

 珍しく素に戻っている彼女の口調。それはソラさんのどんな感情を表しているのでしょうか。

「魔物の位置が分かる……?」

 わたくしは信じられない思いでその言葉を繰り返します。
 ソラさんはドアのところで半身をこちらに向け、主張するように拳を振り回しました。

「そういう魔術の使い方もあるっていう話。見習いだからって馬鹿にするな、魔物からぐらい逃げられる!」

「あ、待って!」

 言うなり行ってしまおうとするソラさん。
 わたくしはとっさに立ち上がり、追いかけました。まるで体がそうするのを待ち構えていたかのように、足はもつれませんでした。

 廊下でソラさんに追いつき、肩に手を触れて、

「駄目、本当に危ないの……!」

「巫女の意気地なし!」

 振り向くなり、ソラさんは怒鳴りました。

 ――わたくしの心に叩きつけるように。

「大切な人のところに駆けつけることもできないなら、町長の娘なんかやめちゃえ!」

 そうして――
 わずか十歳の女の子は、盛大に泣き出しました。

 呆然とその様子を見つめていたわたくしの耳に、「ママ、ママ」と嗚咽混じりの声が届きます。

 ――ソラさんは魔物に母を殺されている――

「ソラさん!」

 わたくしはソラさんを抱きしめました。

 ソラさんはわたくしの腕の中で顔を上げました。泣きはらした顔で、わたくしを見つめました。
 紡がれた言葉は千々に乱れていました。
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