託宣が下りました。

「ま、ママは大けがした後、私たちに会いに戻ってこようとしたんだ。でもみんなが、治療が先だって、ママを連れていっちゃって、それで、それで、ママはもう帰ってこなか……っ」

 言の葉。そのどれもがわたくしの胸を刺すように痛ませ、どうしようもないくらい心が揺さぶられて。

 ――ソラさんはまだ子ども。父の都合や町の都合、周りに及ぼす影響、そういったものすべてが頭にないのです。

 でも……

「……分かりました。でも一人で行っちゃ駄目です」

 わたくしはソラさんの目を見つめました。

 自分でも驚くほど冷静でした。冷静に、そう口にしたのです。

「わたくしも行きます。ね?」

 ――なんてことを。

 頭の片隅で、そう叫ぶ自分がいます。
 町長の娘としての責任や体面は決して忘れたわけではありません。
 もちろん、父の思いも。けれど、

「ほんと?」

 涙に濡れたソラさんの目が徐々にきらきら輝き出す。その光を見ていると、これでいいのだと――思えてしまって。


 たぶん、この決断はソラさんのためではないのでしょう。
 まして父のためではありません。すべてはわたくし自身のために。

(お父様、お母様、ごめんなさい)

「下の階に行きましょう。薬草をたくさん持っていかなくては」

 わたくしは立ち上がりました。足に力がよみがえっていました。



 ソラさんと二人で家を抜けだし、こそこそと走る町中――。

 夕方から夜にさしかかったところで、町はそろそろ暗くなろうとしています。ヨーハン様の瞳の色と違って、今夜は不安になる暗澹(あんたん)色です。

 町は厳戒態勢。母の言葉通り、あちこちに自警団やハンターらしき姿がありました。彼らは火をたくさん持っているので、町は平時より明るいくらいです。正直助かります。

 途中で人々の話を盗み聞きしたところ、「どこからか魔物が数匹逃げ出したらしい」とのこと。

()()()()()――? それは)

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()。それも町の中に!

(ヨーハン様が言っていた『取引』?)

 わたくしはぐっと奥歯を噛み締めました。

 この町に戻ってほんの少しですが、町長の娘として扱われれば思い出します。町への責任――町をふみにじられることへの憤り。
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