託宣が下りました。
「ま、ママは大けがした後、私たちに会いに戻ってこようとしたんだ。でもみんなが、治療が先だって、ママを連れていっちゃって、それで、それで、ママはもう帰ってこなか……っ」
言の葉。そのどれもがわたくしの胸を刺すように痛ませ、どうしようもないくらい心が揺さぶられて。
――ソラさんはまだ子ども。父の都合や町の都合、周りに及ぼす影響、そういったものすべてが頭にないのです。
でも……
「……分かりました。でも一人で行っちゃ駄目です」
わたくしはソラさんの目を見つめました。
自分でも驚くほど冷静でした。冷静に、そう口にしたのです。
「わたくしも行きます。ね?」
――なんてことを。
頭の片隅で、そう叫ぶ自分がいます。
町長の娘としての責任や体面は決して忘れたわけではありません。
もちろん、父の思いも。けれど、
「ほんと?」
涙に濡れたソラさんの目が徐々にきらきら輝き出す。その光を見ていると、これでいいのだと――思えてしまって。
たぶん、この決断はソラさんのためではないのでしょう。
まして父のためではありません。すべてはわたくし自身のために。
(お父様、お母様、ごめんなさい)
「下の階に行きましょう。薬草をたくさん持っていかなくては」
わたくしは立ち上がりました。足に力がよみがえっていました。
*
ソラさんと二人で家を抜けだし、こそこそと走る町中――。
夕方から夜にさしかかったところで、町はそろそろ暗くなろうとしています。ヨーハン様の瞳の色と違って、今夜は不安になる暗澹色です。
町は厳戒態勢。母の言葉通り、あちこちに自警団やハンターらしき姿がありました。彼らは火をたくさん持っているので、町は平時より明るいくらいです。正直助かります。
途中で人々の話を盗み聞きしたところ、「どこからか魔物が数匹逃げ出したらしい」とのこと。
(逃げ出した――? それは)
つまり捕らえていた誰かがいたということ。それも町の中に!
(ヨーハン様が言っていた『取引』?)
わたくしはぐっと奥歯を噛み締めました。
この町に戻ってほんの少しですが、町長の娘として扱われれば思い出します。町への責任――町をふみにじられることへの憤り。