託宣が下りました。
許せない、と言っていたヨーハン様。
(わたくしも許せない)
なるほど、わたくしたちは似ているところがあるようです。そんなことを思ってちょっと笑います。
「何を笑っているんだ巫女? こっちだ」
ソラさんに引っ張られ、足をもつれさせながら進む道。
「巫女、運動不足じゃないか?」
「そ、そうね。家に引きこもっているから……」
「お兄ちゃんは引きこもりは嫌いだぞ」
「騎士のために生活してるわけじゃないのよ」
今このときに町長の娘がほいほい町を歩いているところを見られては具合が悪いので、わたくしたちはできるだけ裏道を歩きました。
「裏道はいいぞ。色んな発見がある! ネズミも多いし」
ソラさんは意気揚々としています。この数日の滞在の間、彼女はこの町を探検していたようです。
「この間この町のネズミと我のネズミを戦わせたのだ。結果は圧勝だった! やられたネズミを作り直すのが面倒だったけど」
「それは最初から戦わせなければいいんじゃ……」
「馬鹿を言え。性能を確認するのが大事だ」
私の魔力は増してきているんだぞ、とソラさんは嬉しげに言いました。
「………」
ソラさんの魔力が増すことに恐怖を感じるのはわたくしだけでしょうか。
ちなみにソラさんは袋をかつぎ、手には藁人形を持っています。袋の中には当然ネズミ人形が詰まっているわけで、想像するとちょっと卒倒したくなります。
道中、幸いなことに魔物に遭遇することもなく、順調に進みました。
わたくしは腕に抱いた薬草袋の感触をたしかめました。もとより父の元には山ほど薬草が集まってきているのでしょうが、気休めでもないよりましです。
(もう少し)
父が運び込まれた家まであと五分ほど。
この分なら無事につけそうです。ほっとして、ソラさんと二人、角をひとつ曲がりました。
そこは酒場のある通りでした。この時間帯、酒場は盛況です。中から聞こえる賑やかな声が、わたくしを妙な気持ちにさせました。町が危険というこのときに、しかもこの近くで町長が怪我の治療をしているというのに、いつも通り平和に飲んでいる人たちがいる……
「………?」
ふと見ると、酒場の横の道から人の足が飛び出しています。
「あ――」
(倒れてる……?)
「何だ、行き倒れか?」
ソラさんが額に手を当てます。わたくしの見間違いではなさそうです。