託宣が下りました。
わたくしは急いで駆け寄りました。
倒れていたのは、老年の男性でした。肩を叩くと反応があります。怪我もしていなさそうです。
「って、うわあただの酒飲み!」
ソラさんが悲鳴を上げて離れていきました。
たしかにすごいお酒の臭いです。きっと酒場でお昼から飲んでいたのでしょう。わたくしは声をかけ、ご老人を助け起こしました。
老人とは言いますが、なかなか立派な体つきをしています。現役で働いている人に違いありません。今日はお休みの日だったのでしょうか――。
すまんすまんとご老人はにこやかに言いました。
「ついうっかり飲み過ぎてのう」
お酒臭いですがいい人です。わたくしは微笑して返しました。
「お薬はいりますか?」
「おお……少しもらおうかな」
薬なら今山ほどあります。わたくしは袋の中から役に立ちそうなものを渡しました。
「ありがとう。優しいお嬢さんじゃ」
「そうだろう。巫女は優しいんだ」
ソラさんが離れたところからわざわざ声を張りました。そこまでして言うことじゃないと思うんですが。
妹さんかねとご老人は訊きました。
「未来の妹だ!」
「違います」
ソラさんの即答をこちらも即座に否定。これだけは譲れません。
「ほうほう。何だか面白いの」
ご老人はわたくしの肩を借りて立ち上がり、愉快そうに笑いました。
「のうお嬢さん、こんなジジイからだが、ひとつ忠告しておくぞ」
「まだお若いですよ。何でしょう?」
「あまり簡単に人を信用してはいかんよ」
「―――?」
ご老人はわたくしから手を放しました。そして、ふらふらした足取りでどこかへ行ってしまいました。
「何だ、変なじいちゃんだな。――うわっ!」
戻ってきたソラさんが、わたくしに近づくなり即座に飛び退きました。「巫女、お酒臭いっ!」
「え、あ、ほんと……」
どうやらご老人のものが移ってしまったようです。
困りました、このままで父の元へ行ってもよいものか――。
「ふ、服を着替えたほうがいいんじゃないか?」
「――いえ。きっと説明したら分かってもらえます」
着替えに戻る時間が惜しい。一刻も早く父の元へ行きたい。せっかく魔物に遭遇せずにここまで来たのです、きっとこれは神のお導き――。